愚か者の戯言

2017.09.13
今、ウエスが見直されようとしているが、改めてその変遷を見てみよう。
ほんの少し前まで、ウエス業者は選別業者の上位にいた。
お金を払って物を買う客であるから当然であった。
しかし中古衣料全盛となり、選別業者がその生産能力を急拡大したころから様相が変わる。
選別量の急増とともにウエス材も急増するが、ウエス業者はそれをすべて受け切れずに、選別業者の倉庫に売れ残ったウエス原料が山積みとなった。
困った選別業者は裁断機を購入し、自身でウエスの販売を始める。
しかし基本的知識も経験もない新参者が市場を獲得する方法は安売りしかない。
市場は安売りを歓迎し、豊饒な富を生み出す土壌は枯れ果て、暗澹たる荒れ地に変わっていった。
選別ウエス一貫業者が市場を席巻する中、零細なウエス業者は選別業者に隷属するしか生きる道はない。
そのような明日のない店を継ごうなどとという酔狂な跡継ぎはいない。
問屋がなくなり番頭が独り立ちするという人的再生産の道も閉ざされた。
もうほどなくして
「かつてウエス屋がというものこの世に存在していた。」
と語り継がれるようになるだろう。
ウエスが業界にとって本当に必要ならば、自ら暗澹たる荒れ地とした市場に再び鍬を入れ、種を播き、豊饒の大地とする、そんな地道な努力が必要だろう。
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